メディオンの腕の中は心地いい。
 心臓が苦しいくらいにどきどきして、それがなんだか気持ちいいものに感じられる。心も体もふわりと浮いてしまいそうになるので、シンビオスは縋るようにメディオンにしがみついてしまう。
 メディオンは笑って、もっと強くシンビオスを抱き締めた。柔らかい髪の中に指を潜らせて優しく梳く。
 頭を撫でられると落ち着くのは、人間も動物だからだろうか。
 シンビオスの鼓動が、だんだんとゆっくりしてくる。その頃を見計らって、メディオンは髪を撫でていた指をシンビオスの頬に滑らせ、顎を持ち上げる。
 いつもは涼やかなメディオンの空色の瞳が、このときばかりは熱くシンビオスを見つめる。シンビオスは再び激しくなる自分の鼓動を聴きながら、目を閉じた。
「----ふぁ…」
 メディオンの唇が離れた後、シンビオスは深く息を吐いた。
 メディオンがクスクス笑って、
「息を止めなくてもキスはできるよ、シンビオス」
 シンビオスのふっくらした唇を指でなぞる。
「解ってるんですけど…」
 シンビオスは恥ずかしそうに瞬きを繰り返して答えた。そのまま、メディオンの胸に顔を伏せる。
 メディオンの傍にいると、息をするのも忘れてしまう。こんなに誰かを愛するようになるなんて、シンビオスは自分でも思っていなかった。
 メディオンに出会ってから、大袈裟でなく自分の人生は変わってしまったと思う。勿論、いい方にだ。
 こんなに幸せだったことは今までなかったから。
「----シンビオス、何を考えてるんだい?」
 メディオンが甘く囁きかける。
 シンビオスは顔を上げて、今度は自分から唇を重ねた。
 言葉にできない想いを伝えるために。


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