解っていた。
 最近の王子は、考え込んでばかりいる。
 何かいいたげにこちらを見ている。
 気付かない振りもそろそろ限界みたいだ。
 だけど…。
「…シンビオス…」
 言わないで。
「やはり私は…」
 それ以上は。
「…どうしても国に…」
 聴きたくない。
 貴男と同じ立場のぼくには、悲しいことに貴男の気持ちが良く解ってしまう。
 いっそ解らなければ、わがままだって言えるのに。
 ぼくだって、この国を、この国の人達を捨てられない。
 だから、貴男を引き止められない。
 だけど。
 お願い。
 今夜だけはわがままを言わせてください。
 ----せめて今夜だけは、総てを忘れさせて。


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