舌がぴりぴりする。
 唇を割って、メディオンの舌が入り込んできた。シンビオスの舌先と触れ合う。
 痺れるような痛いような感覚に、シンビオスは思わず頭を後ろに反らせた。
「----どうかした?」
 メディオンが怪訝な声を出す。
「あ、すいません。----舌を火傷してて、痛くって…」
「ああ、そういえば…」
 朝食に出たポタージュを一口飲んだシンビオスが「熱い!」と声を上げたので、メディオンは大層心配したのだ。
「でも、朝のことだろう? まだ痛むの?」
 優しい口調で尋ねる。
「ええ。今回は結構酷かったみたいです」
 シンビオスは、ちょっと舌先を出してみせた。
「赤くなってませんか?」
「薄暗いからよく見えないよ」
 メディオンは小さく笑った。舌に触れないように注意しながら、シンビオスの唇を指先でなぞる。
「----ねえ、シンビオス、私は猫舌じゃないからどうも解らないんだけど、舌を火傷するってどんな感じなんだい?」
「普通の火傷と一緒ですよ。ひりひり痛むんです。おまけに味覚が鈍くなるから、凄く損した気分です」
 シンビオスの言葉を聴きながら、メディオンはその柔らかい唇を、人差し指と中指とで愛撫した。二本の指の下で、適度な弾力を持つシンビオスの唇が蠢く。
 シンビオスがそっと、メディオンの指先に舌を這わせてきた。
「----痛くない?」
「痛いです」
 しかし、シンビオスは嘗めるのを止めなかった。むしろだんだんと激しくなる。メディオンも指を引くことなく、シンビオスのするがままに委ねている。
「どんな味がする?」
「判りません」
 シンビオスの舌に、メディオンは自分の舌先を触れさせた。そのまま唇に唇を重ねる。上唇にシンビオスの柔らかい唇を感じ、下唇には自分の爪が当たっている。メディオンは指を抜いた。シンビオスの唇と舌を、遠慮なく貪る。
 シンビオスは、今度は逃げなかった。最早、火傷の痛みなど意識しなくなっていた。他の感覚によってすっかり押し流されてしまったからだ。----そして翌朝目を覚ますまで、思い出しもしなかったのである。


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