〜穏やかな陽気に誘われて〜


 ぽかぽかの陽気の中、うとうととしながら。
フラガルド領内の大きな木の根元で休んでいたシンビオスは、ふと・・・ぱちりと目をあけた。

「・・・・・?」

 ぽすん、と肩口に、何か重みを感じたのだ。
その後で、何処か馴染みのある、甘い・・・それでいて優しい香り。
シンビオスはそちらへ目をやって、思わず小さく驚きの声をあげてしまった。

「メ、メディオン様?」

 そよ風が心地よく吹く中で、金色の髪の毛がふわふわと揺れる。
まるで安心しきっているその表情を見ていると、自然と笑みが零れた。

 メディオンは、幼い頃からずっと・・・側に誰かがいると寝つけなかったらしい。
それが実母であるメリンダや、兄弟以上の絆で結ばれているキャンベルでも同じ。いつも何かに怯えているような心細い目をしているくせに、眠る時だけは、1人になりたいだなんて・・・。どうしてだろうか、と考えたことがある。
結局・・・答えは出ずじまいなのだが。

「・・・・・」

 耳元に、穏やかな寝息が聞こえてくる。
多分・・・自分がココで休んでいるとダンタレスなどに聞いて、ここへやって来たのだろう。で、来たはいいが、すっかり眠りこけてしまっていたから、起こすのを止めて一緒に・・・。

「私の前では・・・休んで下さるんですね・・・。」

 気を使わずに、力を入れずにいられる相手と、思ってくれているという事なのだろうか。そういう風に考えてくれているのだとしたら、すごく嬉しいこと。
シンビオスは、眠るメディオンの頬にそっと・・・触れるだけのキスをして、穏やかな陽気に誘われるまま・・・再び瞳を閉じたのだった。


                                 FIN




ほのぼのでまったりで優しいメディシンです。
メディオンが、誰かの前では落ち着いて眠れないっていうの、
実は私も同じことを常々考えていたので、
こんなほのぼのSSを頂いてとても嬉しくなりました。
あゆみさん、ありがとうございました!
by マーキュリー



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