もし拒否されたら、という思いがメディオンの中に湧きあがってきた。その場合、無理矢理進めるのはメディオンの本意ではない。こういうことはやはり双方の合意があってこそだろう。メディオンは手を引っ込めようとしたが。
 不意に、シンビオスがメディオンの方を向いた。
「メディオン王子」
 妙に真剣な口調と真剣な瞳である。
「な、なんだい?」
 これはどういうふうに受け止めたものだろう。メディオンはどぎまぎしつつ返事をする。
「…ぼくってそんなに魅力がないですか?」
「…え?」
「そりゃあ、王子はぼくのことなんか子供だと思ってるかもしれませんけど、…ぼくはもう子供じゃありません!」
 一気に言うや、シンビオスはメディオンに勢いよく抱きついてきた。ーーーーむしろ、飛びかかってきた、と言った方が相応しい勢いだった。何しろ、メディオンが受け止めきれずに、ソファにひっくり返るほどだった。要は、シンビオスに押し倒された格好である。
「…シンビオス」
 思い詰めた瞳で自分を見下ろしてくるシンビオスを、メディオンは痛恨の思いで見つめた。何もしないことが却って彼を傷つけてしまっていたのだ。
 こういう場合、言葉で弁明するよりも、実際に行動した方が早い。
 メディオンはシンビオスの頭を抱き寄せて、深く口付けた。もう片方の手を背中に滑らせ、更に下方に降ろす。
「…!」
 シンビオスが小さく身を震わせた。
「ーーーー君は充分魅力的だよ」
 長く激しいキスの後、メディオンはシンビオスの耳に囁き、そして、それを実証するための行動を進めていった。

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